イラン核問題とサウジ・パキスタン核・ミサイル協力①
イランの核開発は同国大統領の過激な発言によって、もっぱらイスラエルを対象にしたものだとの印象が強い。しかし、サウジアラビアのWMD計画がイランの情勢認識に影響を与えていることは明白であろう。同様に、イランの核開発が中東に「ドミノ」効果をもたらしかねないことも指摘されている。
ここ数年来、パキスタンとサウジアラビアとの核開発関連に関しての報道をよく目にする。2003年11月11日付けの. PAKISTAN CHRISTIAN POSTには、Yossef Bodansky氏とGregory R. Copley氏がサウジとパキスタンの核開発協力について述べている。” Pakistan Saudi Arabia
報道主要部分は以下のとおりである。
パキスタンはサウジアラビアとの間で、同国の核弾頭をサウジ国内に配備することで合意に達した。これはサウジのアブドラ皇太子が2003年10月にパキスタンを訪問した際に合意に達したものである。核弾頭は中国製の新世代弾道弾(DF-3Aを原型とする、射距離4,000-5,000km)に装備される予定である。これによって欧州とインドが射程内に入るが、パキスタンにとってはインドへの第2撃能力を確保することになり、南アジアにおける戦略的均衡に大きな影響を及ぼす。
ジャマリ首相(当時)はテヘランを同月21日に訪問したが、この目的はパキスタンとサウジとの協定を、イランが自国への脅威と認識しないように説明するためであった。その背景には、サウジが対イラン抑止のために87年に中国からCSS-2(2,800km+ range)を購入したことが関連している。
サウジアラビアは、同ミサイル用の生物・化学兵器弾頭開発しており、王立サウジ空軍(Al Quwwat al Jawwiya al Malakiya as Sa'udiya)は合計50基のCSS-2を装備しており、2個射撃中隊(原文ではsquadronsと表記している)により運用されている。1個中隊はal-Joffer、もう1個中隊はSulayel基地に配備されている。このシステムは路上移動も可能であるが、同国空軍は固定式サイトから運用している様子である。
新たなシステムは固体燃料であるが、DF-4派生型である液体燃料方式ミサイルが中国から暫定的に取得される可能性がある。パキスタンからのミサイル取得に関する時程は不明だが、中国からの導入は運用能力獲得時期を早めることになる。
2002年2月頃、Sulayel基地の大規模拡張工事が開始され、ミサイル発射施設、貯蔵施設などが構築されており、この工事のためにKing Khalid Military City近傍にも新たな施設が建設された。また2基の地下施設も建設されている。
本合意のインプリケーションは、(a)サウジアラビアに、欧州と米国に対応するうえでのクレディビリティーと梃子をもたらすこと、(b) サウジアラビアがインドの脅威認識(threat matrix)における考慮事項となる、ことである。
アブドラ皇太子はイスラマバードで10月19日、インドとイスラエルとの軍事協力が「心配事」であると述べ、インド、イスラエル、ロシアとの間で締結された軍事協定を「地域を不安定化(inflame)させ、軍備競争をもたらすと述べた。同人はイスラエルは、同国の安全保障地域がインダス川から大西洋にまで及んでいると認識していると発言している。
パキスタン空軍とサウジ空軍の間には共同訓練が行われているが、サウジ国内のミサイル施設防護訓練を行うことが提案されている。
両国の核兵器関連の協力は数年来進行しているが、パキスタン当局は、サウジからの核兵器配備要請には抵抗し続けてきた。しかしサウジは、パキスタン製の核兵器の配備に向けて歩みを進めていることが明らかである。
99年5月6-7に地、当時のシャリフ首相はスルタン皇太子をカフタにあるガウリの製造施設に案内している。ホストはカーン博士であった。スルタン皇太子はこの訪問でパキスタン当局と核兵器、ガウリ取得に関して「非常に有益な」会談を行ったと情報筋が語っている。
2000年9月にはスルタン皇太子の招きによってAbdul Qadir Khan博士、Ijaz Shafi Ghilani博士、M. Younus博士がサウジを訪問し、カーン博士は20日に行ったスピーチで、パキスタンの98年5月28日の核実験成功に対する貢献に対してサウジアラビア政府への謝意を示している。これは、パキスタン公式筋が認めたよりも以前からサウジの関与を示すものである。(資金援助は80年代のハク政権当時からなされてい
報道概要終わり。
本報道に関する関連報道には以下のようなものがある。
同様の報道はARNAUD DE BORCHGRAVE によって10月20日になされており、”Pakistan-Saudi trade nuke tech for oil,”UPI,20 Oct 2003,<http://72.14.203.104/search?q=cache:y01NC5m9cDAJ:www.upi.com/inc/view.php%3FStoryID%3D20031020-115059-8319r+ISLAMABAD,+ Pakistan Pakistan Saudi Arabia
イスラエル軍のアマン局長であるAharon Zeevi少将もBORCHGRAVE氏の記事を掲載したwtimesの記事を引用して発言している。”Saudis may buy Pak nukes: Israeli General,”ANI, 23 Oct 2003, <http://in.news.yahoo.com/031023/139/28q3m.html > (5 May 2006)同少将はクネセットでも証言しているが、2003年10月当時の中東諸国の核関連報道が多数なされたことに関しては、春名幹男氏は『ハーレツ』紙の分析記事を紹介した上で「まさにモサドの狙いに沿った情報だ。」と指摘している。春名幹男「モサドが操作する核情報」『Foresight』2003年12月号、27頁。
しかしながら、両国の核関連協力報道は、2003年10月に集中していたわけではない。元DIAアナリストのThomas Woodrow氏は2002年には、サウジアラビアの核兵器取得が中国とその代理国家パキスタンの手によって進行しつつあることを指摘していた。同人はサウジアラビアの核関連開発について、「サウジアラビアは単にミサイルと弾頭を輸送するだけで、容易に事実上の核保有国になることができる、サウジアラビアがパキスタンの核・ミサイル計画のために、中国に資金を与えた」ことを述べている。”THE SINO-SAUDI CONNECTION,” China Brief, 24 Oct 2002, http://www.jamestown.org/publications_details.php?volume_id=18&issue_id=661&article_id=4680> (5 May 2006)
最近では、ドイツの週刊誌Ciceroでもサウジアラビアの核・関連報道がなされている。ドイツの安保専門家であるUdo Ulfkotteによると、2004年10月から2005年1月までの間にパキスタンの核科学者らはメッカへの巡礼者を装ってサウジに入国し、同国内のホテルから最大3週間に渡って姿を消している場合もあるという。またJohn Pike氏が登場し、パキスタンの核兵器の半分にはサウジのバーコードがつけられている、と発言している。さらに、リヤド南方のal-Sulaiyilには秘密の地下都市が建設され、数十基ものサイロが建設されていることが衛星写真によって判明したとしている。サイロには、ガウリが配備されていると報道されている。”Saudi-Arabien verfolgt geheimes Atomprogramm,” Cicero
ちなみにこの雑誌は2年ほど前に創刊され、内容は比較的信頼できるとのこと。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
こんばんは。
メルマガ「軍事情報」のエンリケです。
ブログ開設のご連絡をいただきながら、訪問がかくも遅くなり失礼しました。
期待に違わぬ、いやそれ以上の素晴らしい情報で埋め尽くされていますね。(^。^)
メルマガとサイトのコンテンツで、紹介させていただきたく思いますので、その節はどうぞよろしく。m(__)m
さっそくですが、この記事を会員向号外記事で配信させていただきたく存じます。よろしくご配慮ください。
たぶん、これからTB頻発になると思います。どうぞお覚悟のほど。(^。^)
投稿: エンリケ | 2006年7月 4日 (火) 19:59